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鳥取地方裁判所 昭和47年(わ)179号 判決

本店所在地

鳥取市天神町三四番地

法人の名称

中山土建株式会社

元右代表者代表取締役

中山牧蔵

本籍

鳥取県八頭郡河原町大字佐貫一〇一三番地

住居

鳥取市永楽温泉町五〇七番地

会社役員

中山牧蔵

明治三三年一二月二日生

右両名に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官植田忠司出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人中山土建株式会社を罰金一五〇万円に、被告人中山牧蔵を懲役四月にそれぞれ処する。

被告人中山牧蔵に対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中山土建株式会社は、鳥取市天神町三四番地に本店を置き土木工事の請負業等を営むことを目的とするもの、被告人中山牧蔵は本件当時同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、

第一、被告人中山牧蔵は、被告会社の業務に関し、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税を免れようと企て、架空外注費の計上および砂の売上げの一部を除外し、これによって得た資金を架空名義の預金口座に預入して簿外にする等の行為により所得を秘匿して、右事業年度分の所得金額は一四、五八七、六五四円でこれに対する法人税額が四、七八八、一〇〇円であったのにかかわらず、昭和四五年二月二八日所轄鳥取税務署において、同税務署長に対し、同事業年度分の所得金額が二、五〇九、一二五円でこれに対する法人税額は六二五、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の法人税四、一六二、四〇〇円を免れた。

第二、被告中山土建株式会社は、その業務に関し、被告人中山牧蔵において右第一記載のように法人税を免れたものである。

(証拠の標目)

冒頭事実

一、第一回公判調書中における被告人の供述部分

判示第一および第二の各事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(一一通)

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、豊川淳の第三回、小原鶴夫の第四回および遠藤登芽夫の第五回各公判調書中の各供述部分

一、中山政一(三通)、中山政美(五通)、中山春明(二通)、中山奈良子(三通)、川口君野、西村英明(三通)、上田紀子(三通)、北浦信男(三通)および小林弘尚の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、中山政一、中山政美、中山春明、川口君野、西村英明、上田紀子、北浦信男、小林弘尚、大西昭および木下道夫の検察官に対する各供述調書

一、村岡卓夫作成の「脱税額計算書」と題する書面

一、原孝作成の約束手形謄本二枚組五通

一、押収してある下請契約書一冊(昭和四八年押第七号の一)、決算書類一通(同押号の二)、補助簿二通(同押号の三および一五)、工事原価台帳一通(同押号の四)、工事原価台帳一冊(同押号の五)、支払手形簿一通(同押号の六)、支払手形月別明細書一通(同押号の七)、信用金庫普通預金出納帳(一五枚入袋)一通(同押号の八)、下請代金控一通(同押号の九)、請求領収綴一通(同押号の一〇)、大学ノート無記名偽名明細三通(同押号の一一ないし一三)およびバインダー式の貸付係帳簿(同押号の一四)

(法令の適用)

被告人中山土建株式会社の判示所為は法人税法一六四条、一五九条に、被告人中山牧蔵の判示所為は同法一五九条にそれぞれ該当するところ、被告人中山牧蔵についてはその所定刑中懲役刑を選択し、それぞれの金額および刑期の範囲内で、被告人中山土建株式会社を罰金一五〇万円に、被告人中山牧蔵を懲役四月に各処し、情状により刑法二五条一項を適用して、被告人中山牧蔵に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名に連帯して負担させることとする。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件犯行当時の被告人中山には、偽りその他不正な方法によって法人税のほ脱をはかる意図ないし目的はなかったので、客観的にみて被告会社について本来納付すべき法人税の一部免脱の結果を生じた事実があるとしても、被告人中山についてほ脱犯が成立するものではないと主張する。

しかし、本件各証拠によれば、被告会社においては架空外注費の計上、砂の売上げの一部除外等の措置をし、生じた資金を架空名義の預金口座に預け入れて簿外にする等して所得を秘匿し、税務署に対して偽りの過少申告をしていた事実が認められ、被告人中山においても、長い間被告会社の代表取締役として会社の業務全般を統括してきた経過等から、右のような点についても包括的な認識があったと認めるべきことが動かし難い以上、同被告人についてほ脱犯の成立することは明らかである。

また、事後に修正申告をし、あるいは更正決定がなされ、納税された事情があっても、そのことによってほ脱犯の成否に消長を来たすものではない。

弁護人の主張は理由がないので採用することができない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大下倉保四郎 裁判官 秋山規雄 裁判官 江藤正也)

右は謄本である。

昭和四九年三月四日

鳥取地方検察庁

検察事務官 中西譲一

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